2024年11月14日木曜日

UEFA EURO 2004 FINAL

こんばんは。寒くなったり暖かくなったりと目まぐるしい気候に体調管理を改めて見直そうと思う今日この頃です。皆さんはいかがお過ごしでしょうか。

今回は明日ドロップする当店のマーチャンダイズについてご紹介します。

フットボールを愛する人なら誰しも「この色味◯◯っぽいな。」と日常のどこかで感じることがあるでしょう。自分は部屋に並べる雑貨や普段何気なく持ち歩く小物なんかを好きなクラブを連想してついつい手に取って買ってしまうことも多々あります。

そういう自分の好きがライフスタイルに溶け込むことで日常も楽しくなるもんです。そんな思いで今回は今からちょうど20年前にポルトガルで開催されたEURO2004の決勝のカードから色を抽出してソックスを作りました。

EURO2004って「2002年の日韓W杯」や「2006年のドイツW杯」に比べても今となっては注目度が低いように感じます。

自分が人生で初めてTSUTAYAで借りたCDはこの年にリリースされたORANGE RANGEの"ロコローション"だったかな。他にはThe Mad Capsule Marketsの活休前最後のシングル"SCARY"もこの年。セカチューこと映画"世界の中心で、愛をさけぶ"が公開されたのもこの年で、この辺の年代が自分は大好きです。

なんで注目度が低いのかって考えたら答えは一つ。ダークホースのギリシャが開催国ポルトガルを破って奇跡の優勝を飾ったのが大きな要因でしょう。黄金世代とも呼ばれていたタレント揃いのポルトガルにとっては振り返りたくないような悲しい過去です。

実はこの2カ国はグループリーグの時点で同じグループに位置していました。順当に行けばポルトガルとスペインが勝ち上がると誰もが予想していましたが、初戦のポルトガルとギリシャの結果は1-2でギリシャの勝利。結果的にはポルトガルとギリシャが勝ち上がりました。ちなみにギリシャが過去にEUROに出場したのは1986年大会のみで、1勝もできずに姿を消しています。

当時のギリシャの強みは予選8試合で4失点に抑えていたことから分かる通り、強固な守備です。当時LSBだったフィサスは「我々は与えられた武器はひとつだけだった。ジダンやシモン、クリスティアーノ・ロナウドのような選手はないなかった。僕らにあるのはハードワーク、犠牲心、決断力、家族のようなスピリットだけだった。」と語っています。

そして準々決勝でジダン要するフランスに0-1で勝利。

続く準決勝で優勝候補と言われていたチェコ相手にも1-0で勝利して決勝進出を決めています。当大会得点王のバロシュやキャプテンのネドヴェド、そして後にアーセナルに移籍するエースのロシツキーでさえも歯が立ちませんでした。

GLからの再選となった決勝のポルトガル対ギリシャはスタンドの8割を占めるポルトガルサポーターで埋め尽くされたギリシャにとっては大アウェーの雰囲気。しかし後半57分のCKからの1点を守り抜いてギリシャが勝利、優勝を飾りました。

フィーゴ、クリスティアーノ・ロナウド、デコなど名だたるスター軍団が肩を並べる黄金世代を破ったギリシャは奇跡ではなく正真正銘の優勝と言えるでしょう。

そんな2000年代のフットボールで忘れてはいけないアーカイブを靴下に落とし込んでいます。当時を知る方はあの頃を振り返り、初めて知った方はこれを機に過去を掘り下げてもらえたら何よりです。

店頭は明日から。お値段は2,200円税込みです。

オンラインの販売は週明けくらいを予定しています。

では店頭でお待ちしております。

2024年10月15日火曜日

Klopp Joins Red Bull

こんばんは。遠方のお客様の来店が多いウチですが、最近は特に福岡と愛知からお越しの方が多いように感じます。個人的に福岡と愛知には友人も多いので勝手に親近感が湧いています。もちろんそれ以外の他県の方も近くでよく顔を出してくれる方もいつもありがとうございます。たまにはふらっと遠出したい気分なのでおすすめの場所とかあれば是非教えてください。

話は変わりますが、自分の毎朝のルーティンというと仕事前に必ずレッドブルを飲むことです。眠気を覚ましたくてカフェインを注入するというよりかは自分はレッドブルの味が大好きです。全然夜でも飲むこともあるくらいに好きです。おかげで眠れない毎日ですが。

そんなレッドブルがサッカークラブを所有しているのは恐らく皆さんならご存知でしょう。有名どころで言うとドイツのRBライプツィヒ、オーストリアのレッドブル・ザルツブルク、アメリカのニューヨーク・ザルツブルクなど。

さらに最近では現在J3の大宮アルディージャの株式も100%取得したことを発表しています。NTTのクラブ運営にはたじたじだったサポーターからもSNSを見ている感じでは、どちらかと言うと喜びの声の方が多いように感じます。

そして先日、昨シーズンまでリバプールを指揮していたユルゲン・クロップが2025年1月1日よりレッドブルのグローバルサッカー部門の責任者に就任することを発表しました。これに関して世界中では賛否両論の声が相次いで波紋を呼んでいます。特にドイツで。

というのもドイツでは特に嫌われ者のレッドブル・グループ。ブンデスリーガでは企業名をクラブ名に入れることが禁止されていますが、RBライプツィヒという名前にしてRBはレッドブルを意味しない(RasenBallsport(直訳すれば「芝生球技」))というグレーな対応で誤魔化したりとルールを掻い潜るやり方が気に食わないんでしょう。

何より下部リーグの無名クラブを買収しては資金を惜しまず投資して、数年でトップリーグまで上り詰めるという伝統を踏みにじってでも成り上がろうとする姿勢が他クラブの反感を買うのでしょう。

ライプツィヒのブンデスリーガ昇格1年目にはスタジアムに牛の生首を放り込まれるという事件や、ホーム開幕戦となった第2節ドルトムント戦ではライプツィヒが記念マフラーを作ろうとしたところ、ドルトムントがエンブレムの使用を認めませんでした。さらにはドルトムントのウルトラスたちが応援のボイコットを呼びかけました。これも全てRBライプツィヒの収入になるためです。

嫌われまくりのこのクラブですが、自分は正直言ってレッドブル・グループの運営するクラブが好きです。というのもやはり常識を破りつつも、しっかりと実力があってヒール役を請け負ってくれるクラブがいることでさらにサッカー界が盛り上がる気もするんです。

そもそも全てルールの上で真っ当に戦っていてるので勝手にヒール的な立場にされてるだけなんですが、やはり長く歴史が続くものには暗黙のルールというものがあるのも当然です。人工的に作られたプラスチッククラブという言葉で表されることもありますが、きっと自分もドイツ国民ならブチギレてるんでしょうね。

しかしレッドブル・グループの好きなところはただの金満クラブではないということ。とにかく市場価値の高い選手を取りまくるっていう安直な考えでは無く、若い選手を世界中から発掘して25歳くらいで高額で売却する流れが主流となっています。

これまでハーランドやソボスライ、南野拓実、サディオ・マネ、ナビ・ケイタなど名前を挙げるとキリが無い程に数々のスター選手の発掘に成功しています。そして、選手だけでなくクラブの運営に関わる人材にも惜しみなく投資し、あらゆる新しい取り組みを推進しています。

クロップに対して「闇堕ちした」や「裏切り者」などの声をSNSで見受けますが、自分は少なからず今後のサッカー界に大きな影響をもたらしてくれると思っています。しかも次期ドイツ代表監督も視野に入れている中でレッドブルとの契約解除条項もあるそうなので必ず監督としてドイツにまた希望を与えてくれるでしょう。

あとは今年買収された大宮アルディージャがどうなっていくのか動向が気になるところです。この間同じくレッドブル・グループのテクニカルディレクターである元ドイツ代表のマリオ・ゴメスも来日していていよいよって感じですね。

何よりレッドブル・グループのかっこいいところは、全てが一本のエナジードリンクを売ることのために遂行しているということです。サッカーにとどまらずあらゆるスポーツを通じて世界中にファンを作っています。自分もそんな彼らのサッカークラブやエナジードリンクとしてだけではなく、気づけばレッドブル・グループ自体のファンになっています。

2024年10月7日月曜日

One boot. Two players. Only one winner.

こんばんは。だいぶ肌寒くなりましたね。最近は投稿にも綴りましたが、2000年代の選手名鑑を読み漁っては当時を振り返り懐かしんでいます。個人的には当時の選手ってアイコニックな選手が多かったなと感じます。あとはマイナーな国代表で国際大会では輝きを見せずとも、強豪クラブのエースなんて選手は自分は堪らなく憧れを感じます。

皆さんならどの選手を思い浮かべますか?

自分はまずウェールズ代表のライアン・ギグスが思いつきます。マンチェスター・ユナイテッドの下部組織からトップチームに昇格して以来、引退までユナイテッドで活躍したレジェンド選手です。しかし、国際舞台ではほとんど姿を表しませんでした。

ウェールズの魔術師と呼ばれる彼の功績を挙げるとキリがないんですが、今回は彼の履いていたスパイクに注目しました。彼がキャリアの大半を占めていたのがReebokのスパイク。今では聞き馴染みがあまりなくなりましたが、90年代から2010年代前半はサッカーに力を入れていました。

それこそ今やプレミアリーグの優勝争いに台頭するリバプールやマンチェスター・シティもサプライヤーがReebokの時代がありましたね。これがまたかっこいいんです。店頭で「Reebokの時代あったんだ」という声を聞くと、やはりReebokがサッカーギアを生産しているというイメージがない方も多いんだなと思いました。

ちなみに当時のReebokの本社はイングランドのボルトンに位置し、現在イングランド3部に位置するボルトン・ワンダラーズは1993年から2012年までReebokと契約し、スタジアム名もリーボック・スタジアムと名付けられていました。(現在はユニバーシティ・オブ・ボルトン・スタジアム)

オコチャダンスでお馴染みの元ナイジェリア代表オコチャや中田英寿など懐かしいですね。やっぱり当時のReebokはボルトンのイメージが個人的に強いです。Reebokのデザイン性とボルトンのクラブカラーも相性良いんですよね。

しかし、Reebokも業績不振から2006年にadidasに買収されて以降、これまで以上にサッカーへ注力されることはなくなり衰退していきました。

そんな中でもティエリ・アンリやシェフチェンコ、イケル・カシージャスはReebokのスパイクを履いていました。

アンリに関しては2006年のW杯以降にNIKEからReebokに電撃移籍をしています。NIKEの反人種差別キャンペーンに登場してポジティブなイメージを強化したアンリの移籍はReebokにとってかなり大きな出来事だったでしょう。

アンリはのちにPUMAへと移籍してしまうんですが、引退までReebokを履き続けたのがライアン・ギグスです。

そして、アンリとギグスが08/09シーズンのCL決勝の地ローマでReebokのスパイクを履いて激突するのはReebokのサッカー事業において最も象徴的な出来事になったと言えるでしょう。

 

ちなみに当時の決勝前に公開されたReebokの新作スパイクのCMがこちら。アンリとギグスがSMSを通じて冗談を交えながら決勝を待ち望むという構成のCMです。NIKEやadidasに比べるとチープなCMですが、公開のタイミングと偉大な選手2人を使用したキャスティングの豪華さ、そしてこのムーブメントに心が躍ります。

Reebokを最も長い年月履き続けたギグスは現役引退をし、ユナイテッドのアシスタントコーチに就任するタイミングでNIKEと契約を結びました。彼がReebokとの関係を終えたことにより、同ブランドのサッカーへの投資も無くなっていきました。

現在ではほぼ耳にすることは無くなりましたが、だからこそ2000年代のReebokにおけるサッカーギアは夢とロマンが詰まっていると思っています。

2024年7月4日木曜日

The Beautiful Game

こんばんは。急な猛暑にやられる毎日ですが皆さん体調はいかがでしょうか。こんな暑さの中、店頭に足を運んでいただける方には頭が上がらない思いです。いつもありがとうございます。

日中の暑さで帰宅後はソファでぐったりとしてしまうここ最近ですが、そんな中Netflixで見つけたのが「The Beatiful Game」という作品。この映画は「ホームレス・ワールドカップ(HWC)」というホームレスによるサッカーの国際大会を描いたものです。

調べたところ実際にHWCという大会は存在するそうです。日本のメディアでは一切取り上げられておらず、日本ではまだまだマイナーな大会です。しかし、蓋を開けてみるとサッカーを通じて社会復帰に必要なコミュニケーション能力などを培い、人とのつながりや楽しみを再び構築していくというプロジェクトでもあります。

映画のあらすじは、かつてウェストハム・ユナイテッドに在籍していた主人公のヴィニー・ウォーカーがキャリアに行き詰まり、妻と娘と離れて途方に暮れる人生を歩んでいた時にホームレスサッカーと出会い、HWCで優勝を目指すというストーリーです。

ちなみにホームレスサッカーは11人制ではなく4人制。フットサルよりももっと規模の小さい言わばストリートサッカーって感じです。ルールも分かりやすく、ボールひとつあれば誰しもが楽しめるでしょう。そして人生で出場できるのは1回限りです。

主人公のヴィニー・ウォーカーはイギリスの大人気ドラマ「トップボーイ」にも出演しているマイケル・ウォードです。トップボーイを観ていた自分からすると作品にのめり込みやすくて有難いキャスティングでした。

イングランド代表メンバーには薬物中毒やギャンブル依存症、紛争による難民などさまざま。国が違えばその国の情勢を表すかのように抱える問題も違ってきます。劇中には日本代表も登場するんですが、圧倒的に平均年齢が高く、群衆の声援に圧倒されて萎縮してしまう描写が印象的でした。

それに比べて他国のメンバーはどこか希望に満ち溢れている様子。実際の大会に集まる70カ国の平均年齢は22歳ということなので海外との違いを感じました。そして、純粋にサッカーを楽しむ姿に衝撃を受けました。

こういった世界との違いは国ごとにホームレスの定義が違うという点が大きいようで、ヨーロッパでは路上生活をしている人だけでなく、知人や親族の家など「自分の名義で住む場所」を持っていない人も括られます。こういったホームレス予備軍の潜在層を定義に含めることで、予防的な施策を取れるようになるでしょう。

こうしたHWCという存在を知れただけでも大きな収穫と言えるほど自分にとってはプラスな発見だったんですが、映画自体も評価は高く、面白かったです。何より構えて観ずとも分かりやすく内容がすっと入ってくる構成でした。

 

印象的なシーンと言うと、敗退した国も観客席で一緒になって応援する姿に鳥肌が立ちました。そしてシリアで内戦が起きているクルド人とトルクメン人も試合が終わればお互いの検討を讃えて抱き合う。国も違えば言語も違い、文化も違う、それでもサッカーを通じてお互いを認め合うきっかけになれるのは他のものとは例えられない凄さをサッカーに感じました。

そんなサッカーの無限の可能性を見出すべく、お隣の韓国ではソウル市がホームレスサッカーチームを支援するほか、行政と企業が連携してホームレスサッカーを応援する動きを見せています。韓国最大手の自動車メーカー「現代自動車」すらもスポンサーを務めているそうです。

日本という国を表面上だけで見ると「ものづくり」にしても「人間性」にしても評価されることが多いと思っていたんですが、視点を変えると圧倒的に世界との差が開いているのも現実なようです。マイノリティーを排除する考えを払拭するのは難しいですが、誰しも同じ人間としてフラットに接することは意識の変化ですぐに変えれる部分な気がします。そういう思考を持つこと、そして日本のメディアがこういった貧困問題に目を向けることが大事な気がします。

駅などで手売りをしている雑誌「ビッグイシュー」が中心となって活動する日本代表の選手もほとんどが大会後に次の仕事を見つけ、ビッグイシュー販売から卒業をしているそうです。きっとサッカーや国際交流を通じて、自分という人間の存在意義を大いに感じて人として生まれ変わったのでしょう。そのきっかけを作り出すHWCは本当に素晴らしいと感銘を受けました。

HWCの創設者メル・ヤング氏は「ホームレスの人々に対する否定的な固定概念を壊し、人間として尊重する」と掲げています。自分もこれを今読んでいるあなたも、テレビで活躍する大スターも元を辿れば同じ人間です。誰しも他の人にはない素晴らしい要素を持っているに違いない。それを自分自身で見つけられる人はこの世に存在せず、人との関わりがあって評価され自信が生まれるんだと思います。当たり前のようで忘れてしまっているこの感情を見出してくれるホームレスサッカーは本当に関心します。

そして自分という人間を認めてくれて支えてくれる人たちに感謝を忘れてはいけないと思いました。何百キロも離れたところに住む友達もSNSで繋がっていると、不思議と距離が遠く感じませんが、何だか久しぶりに連絡しようと思いました。是非映画を観てHWCの素晴らしさに触れてみてください。

 

2024年6月12日水曜日

The Football Factory

お久しぶりです。また少しブログの更新が滞ってしまい申し訳ありません。書きたいことはたくさんあるんですが、他の業務もあって期間が空いてしましました。できる範囲でブログの更新もしていくので楽しみにしてもらえると嬉しいです。

1996年に公開したイギリスの名作映画「Trainspotting」は、公開以降さまざまな作品に影響を与えました。公開以前のイギリス映画は冴えない時代劇か、さすらいのダンディ男、もしくはラブコメが多かったのに対して、ドラッグ・カルチャーの大胆な描写などによって若者のリアルを描く映画が増えました。僕は観た直後はコンバースばっかり履いてましたね。あのクタクタで履き潰したハイカットのコンバースがかっこいいんですよね。同じ経験をした人もきっといるでしょう。そういった背景から「Trainspotting」なくしては公開されていなかったであろう作品を1本紹介したいと思います。

2004年に公開された「The Football Factory」という映画。ロンドンのサッカークラブ、チェルシーのサポーターを描いた作品で、もしかしたら観たことのある方も少なくないでしょう。チェルシーなのにパッケージ赤なんだってとこは一旦無視してください。

今シーズンのチェルシーは度重なる監督の解任から元イングランド代表のレジェンドであるフランク・ランパードも指揮を執っていましたが、不調のままシーズンを終えました。

ちなみに公開された2004年の04/05シーズンのチェルシーはというと、黄金時代と今でも語り継がれるほどの圧倒的な強さを誇っていました。名将ジョゼ・モウリーニョが指揮を執り、プレミアリーグを制覇したシーズンでもあります。

当時のフォーメーションはこんな感じ。これだけでも映画への興味が湧いてくるのは僕だけでしょうか。そんな期待を含めて鑑賞しましたが、試合シーンを始めとするチェルシー自体の登場は一切ありません。サッカーシーンとドラッグ・喧嘩シーンの割合が2:8ぐらいな感じ。

主人公であるトミーの週末の愉しみはドラッグと酒、SEX、そして仲間と一緒に応援しているチェルシーと暴力だけでした。そんな日々意味のない喧嘩に明け暮れていたトミーと一番の友人であるロッドを連れて近くのクラブに行きます。そこで2人の女性をひっかけて自宅まで押しかけます。しかしその女性の父親がライバルチームである「ミルウォール」の熱狂的なサポーターでした。翌朝起きるとナイフを突きつけられるトミーでしたが、ロッドがクリケットのバットで殴って気絶させ、その場を後にします。

そんな恨みを買ってしまったトミーですが、その後に行われたFA杯の抽選で対戦相手がミルウォールに決まってしまいます。それから毎晩のようにひどい悪夢を見る日々が続きます。それも薄暗いトンネルでミルウォールのサポーターとの抗争で袋叩きにされる内容で、最後にはフードを被り顔を包帯でぐるぐるに巻いた謎の人物に出会うのです。しかし、その謎の人物の正体は分からないまま目が覚めるのを繰り返します。その謎の人物が誰なのか、そしてこんな生活を続けていて良いのかと自問自答する日々を描いたチェルシーを愛するサポーター(フーリガン)にフォーカスした映画です。

この映画にそもそも試合を観戦しているシーンが無いんですよね。この映画で描かれているフーリガンたちは、応援するクラブの勝敗や選手のプレーよりもどこと対戦するかが重要なんです。つまりサッカーのプレーを映し出さないことで、フーリガンがどうしてこの世に存在するのかを問い掛け、理屈なしに描き切っていると感じました。

ドラッグ、酒、SEX、暴力に手を染めるフーリガンというテーマとストーリーに映像、音楽というイギリスならではの描写は当時のイギリス社会そのものを描いています。これは冒頭にも話した「Trainspotting」からの影響も大きいでしょう。常にリアリティーを追い求めるイギリス映画では物語がハッピーエンドで終わることはあまりないのです。その辺も踏まえて観てもらえたらと思います。

悪夢を見始めたキッカケは「フーリガンでいる自分」と「フーリガンではない自分」という対立関係がトミー自身の中で生まれたからではないかと自分なりに解釈しました。つまり主人公は、フーリガンという刹那的な生き方とは違う、人間の「生」に対する執着を初めて持った瞬間だったのです。

作品自体は1時間半くらいで、内容も特別サッカーに詳しく無いと面白くないということは無いと思います。それよりもサッカーに付随するカルチャーに触れてもらえたら、サッカーに対する見方もガラッと変わるでしょう。

個人的にこの作品を観て感じたのは、フットボールがフーリガンを生みだしているように捉えられますが、フーリガンがフットボールを利用しているだけな気もします。そんな自分自身にもしかしたら他の仲間も気がついているのかもしれません。そんな感情を紛らすのがドラッグ、酒、SEX、暴力なのでしょう。よくあるようなストーリーですが、フットボールのカルチャーを通して観るとやっぱり引き込まれますね。気になった方は是非。

Attack on Wembley

こんばんは。EURO2024の開幕が近づき、日本での放映権問題に不安を抱いていた最中ですが、WOWOWのみならずAbema TVでも全試合放送されるそうですね。これは本当にありがたい。どうしてもWOWOWに加入するのに躊躇してしまうのは自分だけではないでしょう。昼夜逆転しても主要な試合だけは欠かさず観たいですね。もちろん仕事には影響の無い程度に我慢します。

そんなEUROの開幕が迫る中、NetflixでEURO2020のドキュメンタリーを見つけました。邦題で「EURO2020 ファイナル: 動乱のウェンブリー」という作品です。一見EURO2020の全試合を追ったドキュメンタリーと思いきや、決勝戦のイングランド代表とイタリア代表の試合の裏で起きた騒動についての内容。

そもそもイングランド代表が国際大会で決勝まで上り詰めたのは1966年にイングランドで開催されたW杯にまで遡ります。つまり、55年振りの決勝進出ということ。そりゃEURO2020も自国開催だけあってお祭り騒ぎになるのは当然でしょう。

しかもこの時は新型コロナウイルスのパンデミックが収まりつつあった頃の話。フラストレーションの溜まった国民はこの時を待っていたと言わんばかりにチケットの有無に関わらず聖地ウェンブリースタジアムに押しかけます。決勝のキックオフは午後8時ですが、早朝から大勢のサポーターで群がり酒を片手にコカインをキメてパキパキ。暴れ狂うサポーターの数は警察の予想をはるかに超えていました。

例えるならば日本で言うハロウィンのようなもの。本質を忘れた群衆が秩序を乱して楽しんでは外部に被害を与える。他人がしていたら自分もOKという悪循環です。まあそれがイングランドの国民スポーツとなればハロウィンなんて比にらないのは想像がつくでしょう。

チケットを持たない人々によってゲートは次々と破壊され、最終的には2,000人以上がスタジアムに侵入したと言われています。さらにはスタジアムの外には6,000人もの群衆が試合終了後に突入しようと待機していたとか。この光景を現場にいた人間はまさにゾンビのようだったと語っています。

結果的にイングランドはPK戦の末にイタリアに敗れたので最悪の事態は免れました。そして敗北を表すかのような突然の雨に救われてサポーターは帰路につきました。幸運にも死者が出なかったのが唯一の救いでしょう。

本編では当時騒ぎ立てていたサポーターやゲートをくぐり抜けた不法侵入者、そして警備をしていた関係者などの証言も盛り込まれていて見応えがありました。

中でもイタリア人の父親と娘の証言には不憫に思いました。念願の娘とウェンブリーで決勝を観るという夢を叶えたものの現場は大荒れでビールをかけられては罵声を浴びせられたりと散々な状況に幼い娘は恐怖から涙をこぼしながらも必死に守り抜く父親には胸を打たれます。最後にインタビュー中に登場した娘が当時持参していたフラッグを片手に父親に抱きつくシーンには感動を隠せません。

そして国を背負って戦ってきた選手もPKを外すと除け者扱い。そしてその黒人3選手に対する差別的発言がSNSに飛び交います。どれほどのプレッシャーに打ち勝ってここまでやってきたのかは選手たち本人にしか分かりません。しかし、理解しようとしないのはもはやサポーターと言えるべき存在なんでしょうか。

そういった疑問が残りつつも、後先考えずに発言してしまうほど熱狂的になる国民的スポーツの力は色んな意味で恐ろしいと感じました。国の文化の違いを感じつつもここまで大勢の国民が理性を失うほど熱くなるものは日本にはきっと無いでしょう。興味を持った方は是非観てみてください。それぞれ感じるものは違うと思います。そんな感想をまた聞かせてください。