2022年12月25日日曜日

No one likes us, we don't care.

W杯も終わり、期間中毎日のように寝不足になりながら店を開けていたのが大変だったようで恋しく思えます。そんなこんなで年内の営業は27日までです。これは店舗もオンライン同時に一旦閉めようと思っています。年始に色々と考えていて、勘の鋭い方はお気づきかもしれませんが、そういうことです。

さて本日はイングランド・ロンドン・サザーク・ロンドン特別区・バモンズィーをホームタウンとするサッカークラブ、ミルウォールFCについてブログにまとめようと思い、PCを開いています。

現在はプレミアリーグの1つ下のディビジョンであるEFLチャンピオンシップに所属しています。クラブカラーは青と白で、発足時の彼らの多くがスコットランドからの出稼ぎ人夫であったことが、白と青を基調としたユニフォームの由来だそうです。

リーズ・ユナイテッドとライバル関係にあり、同じ地域に本拠地をもつクリスタル・パレスやチャールトン・アスレティックとのダービーマッチも盛り上がりを見せますが、中でもウェストハム・ユナイテッドとは1899年から今日まで続く根深い対立関係なのが有名なお話。サポーター同士の衝突により死傷者が発生するなど、重大な事件に発展しました。

そんなウェストハムとミルウォールの対立関係を描いた映画「HOOLIGANS(フーリガン)」という作品があります。作品自体は賛否両論でありますが、個人的にはとても好きな作品の一つです。

そもそも「フーリガン」ってどういう意味?って方もいるかと思うので簡単に説明をすると、スタジアムで迷惑・妨害行為をする熱狂的なサポーター集団のことです。発煙等を焚いたり、武器などを持って観客へ暴力行為などを行い、負傷者やひどい時は死者を出すこともあります。日本では考えられませんが海を越えた遠い国ではこれもカルチャーの一つなんです。

映画は内容は、友人の仕掛けた罠によりハーバード大学を退学処分になったジャーナリスト志望のアメリカ人青年マット(は、傷心のまま姉の住むロンドンへ渡り、姉の義弟でイギリス人のピートと出逢います。ピートはウェストハム・ユナイテッドのフーリガンである"GSE”のカリスマ・リーダーです。サッカーなど全く興味がなかったマットでしたが、ピートに導かれるままに、いつしか危険かつ陶酔的な暴力の魅力に取り憑かれた”フーリガン”の世界へと導かれて行きます。そしてマットはそれまで眠っていた闘争本能に目覚め、人間として一皮剥けた男に変わっていきます。そんなある日、因縁の相手である”ミルウォール”との間に一発触発の事件が起きてしまうというストーリー。

内容としてもワクワクさせられる作品なんですが、とにかくGSEのメンバーがかっこいい。それは暴力や喧嘩が強くてかっこいいとかではなく、生き様がかっこいいんです。他の誰にも譲れない何かをそれぞれが持っているように見え、垣間見えるそんなシーンに心を打たれました。

そして何よりリーダーのピートのファッションがとにかくクール。adidasのトラックジャケットにStone Islandのロングコート、下は緩めのシルエットのデニムに白のスニーカーがトレードマークのスタイリング。コートのスタンドを立たせているのも印象的でした。彼以外にもUKファッションの参考になるスタイリングがたくさんあるのでぜひ自分の目で確かめてみてください。

少し話が逸れましたが今回はそんな映画でのライバル"ミルウォールFC"がテーマなので少し戻します。

ミルウォールのホームタウンは、ロンドンでも治安の悪い地域のひとつで、辺りには労働者向けに建築された古めかしいアパートや住宅が建ち並んでいます。そうした建物に囲まれるように旧ホームスタジアム「ザ・オールド・デン」が存在しました。サポーターの粗暴から過去に数回FAにより使用停止にされているスタジアムで、フーリガンとミルウォールの象徴でした。

ミルウォールのサポーターによる、相手サポーターはもちろん選手・審判への攻撃は日常茶飯事で、相手選手が襲撃を恐れてコーナーキックを拒否することもあったそうです。

1985年3月のFA杯準々決勝ルートン・タウンFCとのアウェーゲーム。ミルウォールのフーリガンは、ピッチに乱入し、相手選手や審判を一斉に攻撃。スタンドの椅子ははぎ取られて、ルートンのファンが逃げ惑う中へと投げ込まれました。角材からナイフまで多くの武器を手にした暴徒は、200人以上の警官隊と衝突。47人が重軽傷を負い、31人が逮捕されるという事件になりました。FAカップ準決勝とあって、この試合はTV中継されていたため、英国全土にミルウォール・フーリガンの姿が映し出されました。

このような経緯もあり、マスコミは、ミルウォールのサポーターをフーリガンと関連させたり、彼らの悪い部分だけを切り取ってと報道しました。これらの出来事から、ミルウォールのチャントに"No one likes us, we don't care"「みんな俺たちのことを嫌うが、俺たちは気にしない」というものが存在します。

クラブにとって歴史は様々ですが、こういったフーリガンと共存するクラブがあるということを知っていただけたらと思います。もちろん暴動は良いことではありませんが、歴史を読み解いてクラブを知ることはとても大事なことだと思います。

ちなみに1993年に現在の「ニュー・デン・スタジアム」へ移転。過去の教訓を活かしスタジアム内には数多の安全対策を施しているそうです。

Millwall FC Knit Cap

そして本日はそんなミルウォールFCのニットキャップを入荷しました。フロントに刺繍されているのはエンブレムにも施されているライオン。愛称として”ライオンズ”と呼ばれることもあるクラブの象徴です。ライオンが極悪クラブとは思えない可愛らしいマスコットとして刺繍されています。そしてデカデカと書かれたMILLWALLの文字。おまけにポンポン付きで今の気分にピッタリじゃないでしょうか。クラブの歴史を知った上で愛着が沸いてもらえると嬉しい限りです。お早めに。

2022年11月30日水曜日

Total Football

W杯が現在開催されていますが、皆さんはご覧になっていますか。時差の関係で深夜帯の試合はなかなかライブで観ることは難しいですよね。中東カタールでの開催ということもあり、ヨーロッパ諸国で開催される例年よりはまだ観やすい時間帯かなと思いますが。

毎日のように世界トップクラスの試合が観れる4年に1度の祭典ですが、日本での盛り上がりには欠けるような気がします。サッカーとは無縁な方も、僕のようなサッカーをこよなく愛している方にももっとサッカーを、いや"フットボール"を好きになってもらえたらとブログを綴っています。

日本代表は現在グループリーグ2試合を終えて勝ち点3の2位。そして本日、首位を走るスペインと日本時間の4時に対戦を控えています。スペインは第1試合、コスタリカに7対0と圧倒的な力の差を見せつけています。コスタリカに負けた日本はスペイン戦に向けてのスカウティング、そして采配に期待が高まります。

ちなみにスペインとコスタリカの試合データがこちら。圧倒的なボール支配率とパス成功率の高さが分かります。このデータを見て分かる通り、スペインは「パスサッカー」を伝統的なスタイルとして持つ国です。

今回はそんなスペインのサッカースタイルの起源をまとめてみました。最後まで読んでいただくと、より観戦を楽しめんではないでしょうか。

スペインで最も歴史のあるクラブがFCバルセロナ。サッカーが詳しくない方でも聞き馴染みのある、メッシ、ネイマール、ロナウジーニョといったスター選手が在籍していたことでも有名な超ビッグクラブです。

1988年、そんなバルセロナに監督として就任したオランダの英雄「ヨハン・クライフ」。彼はバルセロナに「トータル・フットボール」というサッカースタイルを落とし込みます。

「トータル・フットボール」とは何なのか。「トータル・フットボール」はフィールド上の11人の選手がそれぞれのポジションに縛られず、とりわけショートパスを使って流動的にサッカーを展開するスタイルです。 例えば、フォワードは攻撃のみならず、守備にも積極的に参加して相手の選手に激しくプレッシャーをかけることも求められます。

「ボールを70%支配できれば、試合の80%には勝つことができる」と語っています。この理論でいくと、「相手チームは残りの30%しかボールを保持できない」つまり、自分達の攻撃時間が長くなり、相手の攻撃時間は極端に短縮することができる。この概念をバルセロナに浸透させ、1990年から1994年の4シーズンをリーグ制覇に導きました。

スペイン人は小柄な選手も多く、体格面では日本人に似ていると言われることもあります。フィジカルで勝負するのではなく、クライフが残した「人はボールより速く走れない」という言葉が全てを物語っています。そんな彼の戦術がスペイン中に広がりを見せました。

しかしスペイン代表としては64年のEURO優勝以降タイトルはなく、ワールドカップでも良くてベスト8という時期が長く続きます。

スペイン代表が大きな成長を成し遂げたのが2008年。この時期に監督としてバルセロナを率いていたのが、クライフの元でも選手として活躍しており、現在マンチェスター・シティの監督である「ジョゼップ・グアルディオラ(以降ぺップ)」です。クライフの教えをもとに彼のアイデアを加えた、的確なポジショニングによる正確なパスサッカー。当時のバルセロナに所属する選手の多くがスペイン代表に選出され、2008年のEURO優勝を果たします。それから2年後のW杯も優勝、さらに2年後のEUROを制覇し2連覇を成し遂げます。

ペップは「ティキ・タカ(Tiqui-Taca)」という戦術及びスタイルを作り上げました。語源は諸説ありますが、選手間でのワンタッチプレーで回すパス回しを見た実況者がスペインで発売されていたクラッカーの名前をとってつけたそうです。

ティキ・タカとはロングボールには頼らず、ショートパスを駆使してボールポゼッション高めて相手ゴールへと迫ります。基本的にワンタッチ・ツータッチでテンポよくボールを動かし、1人の選手が長い時間ドリブルでボールを持つことはありません。ショートパスができるように常にボールホルダーに対していくつかの選択肢を作り出し、チーム全体で攻めていきます。つまりボールコントロールやパスの精度など、選手各々の高い技術が求められます。そして素早い攻守の切り替え。これらの求められるものが、現代サッカーのレベルが高まった今、「トータル・フットボール」としての完成形として生まれました。

そんなスペインの黄金時代をサッカー少年だった当時の自分は魅了されていました。見ていたものはまさにクライフが提言していた「美しいサッカー」そのものだったことが今でも鮮明に記憶に残っています。ちなみに当時スペインの10番だった「セスク・ファブレガス」が僕の最も好きなサッカー選手です。

このスタイルをチームに落とし込むにおいて、選手に求められるものは「責任感をもち、自己犠牲の精神を備えた選手を育成しなければならない」ということ。そしてクライフは「トータル・フットボール」をこう完結に定義しています。「すべてのために責任を果たしたうえでの自由」と。これはサッカーのみならず人生においても大事な教えだと僕は解釈しています。

本日のスペイン戦。もちろん日本代表を応援しますが、両者譲らないスペクタクルな試合展開に期待しています。試合予想は1-0で日本勝利です。ではまた次のブログでお会いしましょう。

2022年10月6日木曜日

The Claret

世界最高峰のプロサッカーリーグと言われるイングランド・プレミアリーグ。そんなプレミアリーグにユニホームが酷似している3クラブがあることをご存知でしょうか。フットボール好きなら1度は疑問を抱いたことがあると思います。

バーミンガムをホームタウンとするアストン・ヴィラFC。ランカシャー州バーンリーをホームタウンとするバーンリーFC。そして2クラブ目はロンドン東部をホームタウンとするウェストハム・ユナイテッドFC。

この3クラブに共通するのがクラブカラー。ワインレッドと水色の組み合わせで、この色を見るといずれかのクラブを思い浮かべる方も少なく無いはず。

話は戻りますが、同じクラブカラーの3クラブには一体どんな歴史があるのでしょうか。先に結論から述べるとアストン・ヴィラが最初にこのカラーリングを採用したと言われています。遡ること148年前にアストン・ヴィラFCは創設されます。プレミアリーグとしては2番目に古い歴史のある古豪クラブです。実際にこのカラーリングを採用したのは1888年で、このクラブカラーに変更してから様々なタイトルを獲得しました。リーグとFAカップでそれぞれ優勝7回、1981-82シーズンに欧州制覇の経験もあります。

そして1910年、バーンリーがアストン・ヴィラのクラブカラーを故意に盗作したそうです。これはイングランドのヨーク大学の歴史学者デビッド・クレイトンの著書”Burnley FC Miscellany”という本に綴られています。

当時逆境の時期を経験していたバーンリーはアストン・ヴィラの誇り高いクラブカラーを使用し、1914年にFAカップ優勝、1921年にはリーグ優勝を成し遂げます。それから何度かカラーを変更しましたが、最終的にワインレッドに落ち着き、現在も使用しております。

他の2クラブと違う点はクラブカラーをワインレッドのみで謳っています。そのためWikipediaにもクラブカラーはワインレッドのみの表記です。日本ではワインレッドという色が聞き馴染み深いですが、現地では【claret (クラレット)】と言われており、”The Clarets”の愛称で呼ばれています。

そして最後にワインレッドと水色のユニフォームを採用したのがウェストハム。その歴史は1897年に始まります。諸説ありますが、強豪のアストン・ヴィラを真似たとか、ある選手がアストン・ヴィラの選手に徒競走で勝ちユニフォームを貰ったことが起源だとの逸話もあります。クラブが当時関係を持っていたテムズ鉄工所の会社の名前をクラレットに変更したという歴史もあるそうです。

ちなみにフレッドペリーの名作ポロシャツ「M12」で使われている”WHITE / ICE / MAROON”というカラーリングはウェストハムのクラブカラーを採用しています。1960年代、フットボールファンは地元のスポーツショップにクラブカラーのポロシャツを求めるようになります。そういった声から生まれたのがこのカラーリングのポロシャツ。唯一無二のこの配色に惹かれますね。

 

ウェストハムのかつての本拠地ブーリン・グラウンドがあった場所のすぐ近くにあるアイコン的カフェ”ケンズ・カフェ”では2018年、ホワイト/アイス/マルーンの波乱万丈な歴史を祝福すべく、カラーテイクオーバーを実施しました。外観のみならず店内も3色で埋め尽くされたこの空間。夫婦で営むこのカフェは毎週末、サポーターがスタジアム行きのバスに乗る前に、紅茶とベーコン・サンドイッチを求め列をなしているそうです。1度は訪れてみたいですね。

今回はフットボールのみならずFred Perryなどのブランドにも影響を与えたイギリスの歴史をお送りしました。

00's Aston Villa FC Training Pants

ちなみにアストン・ヴィラのトレーニングパンツを先程オンラインにアップしました。こちらは00年代の比較的新しいモデルですが、クラブの歴史を知った上で履いてみるとまた違ったファッションの楽しみ方ができるんでは無いでしょうか。ぜひご検討下さい。

2022年9月14日水曜日

This history of the Football Casual.

フットボールを語る上で外せないのが、カジュアルズ(Casuals)というカルチャー。イングランドでは毎週末にサッカースタジアムに通う労働者階級のファッションを“Football Casual”と呼びます。

英国のユースカルチャーはモッズ、ロッカーズ、テッズ、スキンズ、パンクなど、常に音楽を背景にして発展してきましたが、カジュアルズはフットボールファンの中からはじまり、スタジアム内外のフットボールファンの間、つまりオーディエンスから発展してきたカルチャーです。ここが他のサブカルチャーとは大きく違う点です。

そもそもカジュアルズとは70年代の終わりに、何千というリヴァプールのサポーターたちがチームに帯同してヨーロッパをまわりアディダスのスニーカーを手に入れ、それを履いてロンドンのチームとの試合に行く、それを見たロンドンの若者たちが衝撃を受け真似たというのを80年代に入ってから雑誌がカテゴライズして広まった言葉です。

リヴァプールでは自分たちを“スカリーズ=Scallys”と呼び、カジュアルズはロンドンでの呼称として広まりました。

今回は1979年のポストパンク時代の英国、マージーサイドが舞台のカジュアルズを描いた作品、「AWAY DAYS」という映画をご紹介します。

母親を1年前になくした19歳のカーティはアート学校を途中でやめ、叔父の働く職場で下級公務員として働いています。家庭は中産階級で父親と高校生の妹と住んでいます。

収入をクラブ、レコード、サッカー、ライブにつぎ込む彼は、ある日、ギャング集団”THE PACK”に所属するエルヴィスと出会います。

彼らはピーターストームにフレッドペリー、ロイスのジーンズ、そしてアディダスのスニーカーを履いてスタジアムで常に問題を起こしていました。お揃いの制服を着て肩で風を切り、街を闊歩するTHE PACKの姿は、中産階級のカーティには自分の周りにいない特別なものを感じていました。エルヴィスはカーティに“THE PACK”と付き合うことが危険であることを警告しました。

しかし、それよりもエルヴィスはカーティの様に芸術、音楽、詩、そして死について語り合える友人をずっと待っていたのです。エルヴィスはカーティに、Joy Divisionの「New Dawn Fades」を聴きながらいつも死について考えていると語っていました。

英国特有の階級差だけでなく、同性愛要素も絡まり複雑で繊細な人間模様を描いています。作中の79年はホモフォビアが根強く、特にフットボールフーリガンのようなマチズモ全開の世界においては忌むべき存在で、カミングアウトできずに苦しみを抱え、部屋にロープを吊るし常に死を意識していました。

ある日の遠征(=Awayday)でカーティは成果を得るのですが、“THE PACK”のボス、ゴッドンに認められることはありませんでした。自分よりも、謎に包まれた存在のエルヴィスが尊敬を集めていることに苛立つカーティ、自分の想いが届かないことに苦悩するエルヴィス。次第に2人の溝は深まっていきます。

あらすじはざっとこんな感じ。

先の見えない将来への絶望や日々の焦燥が若者たちを暴力に駆り立て、やがて悲しい結末へと向かっていく、そんなリアルを描いた物語。

エルヴィスとカーティの行き着く先の違いが彼らの階級差によるもので、対極な2人が交わって意気投合したり、ぶつかって離れてしまったり。2人の関係が崩れ落ちていくシーンは観ていて胸が苦しくなりました。どのシーンもずっとどんよりとした曇り空。それはまるで心の中を映し出しているかのようでした。

ここからは劇中のファッションの話を。

エルヴィスの家に訪れたカーティがadidasのスニーカーを見て「この靴は?」と尋ねるシーンがあります。これがadidasの”FOREST HILLS”。70年代後期に発売されたフォレストヒルズは、主にリバプールを中心とした北部で人気でした。当時最軽量(250g)のテニスシューズで、柔らかいカンガルーレザーとゴールドのソールとストライプが特徴です。もともとのソールは白かったんですが、人気が出たのはゴールドソールの再販版だったそうです。

その他にも”SAMBA”、”NASTASE”、”SMASH”、”MALMO”など様々なadidasのスニーカーが登場するので、そこにも注目して観ると、また違った面白さを感じれると思います。

90's adidas GAZELLE

本日オンラインにアップした”GAZELLE”もカジュアルズに愛用されていたスニーカーの1つです。

1966年にサッカーやハンドボールなど、屋内・屋外問わずさまざまな場所でトレーニング(または競技会に使用)するために開発されたモデルで、ヨーロッパではプロサッカー選手に愛用者が多いことから、チームのサポーター達、特にカジュアルズ界隈では、定番モデルとして絶大な支持を集めたスニーカーです。

皆さん一度は見たことがあるであろうJamiroquai の “Virtual Insanity”のMVでも履かれています。

1991年に豊富なカラーバリエーションで復刻されると、オアシス、ビースティボーイズ、マドンナ、ケイト・モスといった90年代を象徴するアーティストたちにも愛されていました。気になった方はオンラインまで。

そして劇中で妹に小馬鹿にされながらも「これが制服なんだ」とカーティが意気揚々に着こなすピーターストームのカーキ色のカグール。日本ではアノラックパーカー、ヤッケなどの名称で呼ばれているプルオーバーのジャケットをイギリスではCagoule(カグール)と呼んでいます。

ちなみにエルヴィスはこのカーキのカグールを着ているシーンはありません。早くこの集団から、この生活から抜け出したいという意思表示でもあったと思います。

イングランドではリバプールのサポーター達がチャンピオンズ・リーグで海外遠征の際に着用し、他チーム特にロンドンのTerrace casual(ゴール裏のコアなサポーター)がカグールにポロシャツ、ジーンズ、アディダスのスニーカーといったファッション・スタイルをこぞって真似し始めたそうです。

カグールにフレッドペリーやラコステのポロシャツなどスポーツウェアブランドと合わせて着られていました。

ちなみにブログ内で何度か登場した”フーリガン”とはサッカーの観戦中に暴れたり、試合進行を妨害する熱狂的なサポーターのことです。フーリガンについてもまた改めてご紹介します。

そんなフットボールカルチャーを描いたこの作品。是非一度ご覧ください。

2022年8月10日水曜日

You know how long a day is up Saturn?

今日は好きな映画を一本。”SWEET SIXTEEN”という映画は知っていますか?僕の好きな映画の1つです。

今から10年前の2002年に公開されたイギリスの映画で、この映画を知ったきっかけというと、この店を開く前に大阪の古着屋の先輩に自分の好きなファッションやカルチャーを話していたときに教えてもらった映画です。きっとこのブログの読者の方も映画内のファッションが好みの方も多いはず。残念ながらサブスクにはありませんでした。僕はTSUTAYAでレンタルして観ました。

労働者階級の貧困層をリアルに描いたこの映画。主人公は15歳のリアムという少年。母親の恋人で薬物の売人でもあるスタンが犯した犯罪を庇ったため刑務所に入っていました。リアムの夢は父親とおじを除いた家族のみんなで湖畔にある新しい家に住むことで、その夢に向かって手付金を稼ごうと頑張るのですが、様々な厳しい現実に悩まされてしまうといった内容。リアムが16歳の誕生日を迎えるまでの2ヶ月あまりの物語です。

映画を観ての感想としては、リアムには”家族と一緒に幸せに暮らしたい”といった大きな夢を持つ純粋さと、ストリートを生き抜くための知恵が共存しているように見えました。教養は無いはずなのに、とにかく頭の回転が速くて行動力がありました。そして大切な人への愛を感じるシーンがある反面で、なかなか自分の思うように上手くいかないとこに胸が締め付けられました。純粋さゆえの間違いに気づかないというのは少年時代に誰しもが経験したことがあるのではないでしょうか。

15歳のときの自分を思い返すと、勝手に大人の仲間入りだと勘違いしていたこともあったなって。でも実際は15歳ってまだまだ子供で何でもできるわけじゃないって気付くんですよね。

タイトルとは違い全く甘くない青春映画でした。後味が悪いと感じる人もいると思いますが、不思議と僕はリアムの必死で真っ直ぐ過ぐなところに背中を押された気がします。

主人公リアム役のマーティンコムストンは元々プロサッカーチームに所属してる17歳で、学校の先生にすすめられてオーディションを受けてみたところ、監督のケン・ローチが2ヶ月かけて探してた主役に選ばれサッカーを辞め今作から俳優になったそうです。

他の主要キャストもほとんどが本作がデビューの俳優ばかり。マーティンコムストンが今作のプロモーションで来日した際のインタビューで「その日毎に脚本が渡されて常に先どうなるのかはわからなかったからリアムに嫌なことがあると本当に嫌な気持ちだった」と話していておもしろい撮り方だなあと思いました。キャスティングも撮影方法もリアリティを追求されています。

この映画はファッションも見所の一つです。当時のイギリス労働者階級の貧困層の若者たちを指した”Chav”(チャヴ)という言葉があります。

彼らはダボッとしたパンツにパーカーかトレーナー、もしくはナイロンジャケットなどを着て、6パネルのキャップをギャンギャンに被っていることが多いです。

僕の個人的な解釈ではスポーツウェアが特に多いってイメージです。本編でもリアムや友人のピンボールはいつもこういったファッションです。

そもそも”チャヴ”という名は自分たちで名乗っているのではなく、ロンドンの社会学者たちが付けた名前です。つまり、なんらかのムーブメントを創ってやろうとしているわけでもないんですよね。

この辺のイギリスカルチャーはまだまだ沢山あって紹介したいんですが、長くなりそうなのでまた今度映画と一緒にお話ししようと思います。興味持ってもらえたら是非観てみて下さい。