2023年10月5日木曜日

Detergent Sweatshirt

夏も終わり10月に入りました。日中はまだまだ暑い日もありますが、夜風を浴びると秋の訪れを感じます。店頭でも秋物商品の占める割合も増えてAWの準備を着々と済ませる方が増えきて嬉しい限りです。ありがとうございます。

そんな僕の好きな季節になってきたとこで久しぶりに当店オリジナルのマーチャンダイズを販売します。制作にあたってテーマを決めようと考えていたところにこんなものを見つけました。

これはエミレーツ・スタジアムで行われた僕が愛してやまないアーセナルのホームでの試合の1シーン。ハヴァーツの後方にLED広告として映し出されているのは「Persil(パーシル)」というドイツ生まれの衣類洗剤ブランドです。日本ではあまりメジャーではないPersilですが、本国ドイツをはじめイギリスなどでは誰もが知るブランドのようです。日本ではコストコに売ってるとか。

Persilは今年2023年からアーセナルと2年間のグローバルパートナーシップを締結しました。きっとグーナーはコストコに駆け寄った方もいるんじゃないかと思います。

このPersilを見た瞬間にスペルがPelsiveに酷似していることから、グーナーであることに誇りを持ち、Persilをサンプリングしたマーチャンダイズを作ろうと決意しました。

今回は季節に合わせてスウェットにグラフィックを刺繍で落とし込みました。そしてカラーはアイビーグリーン。なぜこのカラーを選んだかというと、今シーズンのアーセナルの3rdキットから抽出しました。個人的にも3rdキットが発表されて久しぶりに現行のユニフォームを欲しいと思いました。このキットは82/83シーズンのアウェイキットをイメージしており、レトロなスタイルを再現したモデルとなっています。公式からはこんなプロモーションムービーも公開されています。

今回使用したボディは厚すぎず薄すぎない10.0 ozで、幅広いシーズンに着ていただけるように裏地はパイル地のものを選びました。そして生地はコットン100%なので肌触りの優しい心地いい着心地です。サイズはM、L、XLの3サイズ展開でサイズ表は下記の通りです。

(M) 着丈64cm / 身幅54cm / 袖丈58cm / 肩幅 46cm

(L) 着丈67cm / 身幅57cm / 袖丈59cm / 肩幅 49cm

(XL) 着丈69cm / 身幅60cm / 袖丈60cm / 肩幅 52cm

ちなみにお値段は9,900円 税込です。

個人的にこだわったのはフラッシャー。この仕事を長くしているとフラッシャー付きのデッドストックにテンションが上がるものです。ということでどうせならフラッシャーも製作することにしました。

このフラッシャーは3rdユニフォームの基となった82/83シーズンの要素も入れて、手に取っていただいた方に、より雰囲気を味わってもらいたいと考えて1982年頃に販売されていた”Persil automatic”をイメージしたデザインとなっています。

もろにアーセナルを感じさせない絶妙なサンプリングとなっているので、グーナーの方以外でも気に入ってもらえるんじゃないでしょうか。個人的にはかなり気に入ってます。

販売は明日107()に実店舗から先行販売させていただきます。オンラインに関しては107日の20:00に販売開始します。よろしくお願いします。

2023年6月23日金曜日

Napoli are champions of Italy

 今シーズン、33年ぶりのセリエA優勝を成し遂げたナポリ。シーズン序盤から躍動する攻撃陣の好調ぶりから、なんと残り5試合を残した段階で2位ラツィオとの勝ち点差が16ポイントとなり優勝が決定しました。これはディエゴ・マラドーナを擁した89/90シーズン以来の33年ぶりの優勝です。

優勝の立役者のひとり、FWクバラツヘリアの開幕時の市場価値は1000万ユーロでしたが、現在は1億ユーロ(日本円で約150億円)と10倍の数字に。そして今季32試合26ゴールでセリエA得点ランキングトップのオシムヘンは1億5000万ユーロ(日本円で約230億円)という金額に大きな変動が見られます。

イタリアの実業家、映画プロデューサーでもあり、ナポリの会長でもあるデ・ラウレンティス氏は「来季はチャンピオンズリーグを狙う」と威勢の良いコメントを残していますが、ビッグクラブがこぞってナポリの選手たちの獲得を狙っていることは確かです。市場価値も上がればより高い金額を提示してくれるクラブに移籍を考える選手も少なくないはず。

そして優勝に大きく貢献し、チームを指揮していたルチアーノ・スパレッティ監督が今季限りで退任をしました。彼は1995年から監督としてのキャリアをスタートさせ、セリエAを中心に様々なクラブを率いました。中でもASローマでの監督時代に大きな注目を集めました。その名も「0トップシステム」。生粋のストライカーを起用せず細かなパス回しとMFの走り込みを組み合わせた攻撃サッカーはセリエAで最も美しいサッカーと言われました。

07/08シーズン、ローマはFWに怪我人が続出し、遂には出場できるFWが不在という窮地に追い込まれました。そこでスパレッティ監督は本来、「1・5列目」で「司令塔」の役割を担っていたチームの大黒柱トッティを1トップに据えて、ピッチ上に純粋なFWを1人も置かないという賭けに出ました。結果的にこの斬新なシステムに対し対戦チームは有効な対策を持ちえず、ローマの快進撃が始まったのです。この戦術は後にバルセロナを始めとする強豪クラブにも大きな影響を与えました。

なんだかんだで前置きがかなり長くなってしまいましたが、今回はそんなナポリのウルトラス(過激派サポーター)の実態を描いたNetflixオリジナルのイタリア映画「Ultras」をご紹介します。

ナポリはなんといっても熱狂的なサポーターが有名でもあります。そもそもイタリアという国は南北での格差が現在でも問題として挙げられます。産業が発達して経済的にも豊かな北部からは、南部に位置するナポリの経済的・社会的な後進性を象徴するシンボルとして、偏見と蔑みの目で見られてきました。特に、対戦相手のサポーターからの扱いは酷く、ミラノやヴェローナに遠征するたびに「ようこそイタリアへ」とか「石鹸で身体洗ったか?」とか、そういう横断幕やコールで迎えられてきました。

「貧しい庶民層にとって、この街で生きて行くのはいろんな意味で楽なことじゃない。カルチョはそのはけ口として機能している面がある。」とイタリアのスポーツ紙が語るようにナポリに住む人たちにとってサッカーは宗教のようなもので、ナポリほどサッカーに熱狂し情熱を傾けている都市はイタリアを見回しても他にはないと言われます。

ナポリで生まれナポリで育ったカルチョ(イタリア語でサッカーの意)に熱狂する男たちが集う過激派サポーターグループ「ウルトラス」。グループの創設に関わった高齢な世代は過去に起こした暴動事件によってスタジアムの出禁を食らっています。その1人がこの物語の主人公サンドロ。そんな彼らとスタジアムに足を運ぶ若い世代に亀裂が入っていき、次第には対立することになります。劇中ではスタジアムに入れない彼らに向けたチャントで「Onoriamo i diffidati(出入り禁止の友に敬意を)」と力強く叫ぶシーンがあります。

暴動事件に関わった人物の中にアンジェロという若い青年の兄もいました。しかしその暴動事件によって兄は死亡、そして父親もおらず母親は母親気取り。そんな孤独なアンジェロを息子のように思うサンドロとの描写は心温まるシーンばかりです。果たして対立した「ウルトラス」はどんな結末を迎えるのかというのが簡単なあらすじです。

物語の構成としては日本のヤクザ映画といった感じで、ヤクザ映画が好きな自分はかなり観やすかったです。皆さんの予想通りほとんどが喧嘩やドラッグ、SEXで、もちろんサッカーシーンは一切ございません。よくこんなに正常でいれるなってぐらいひたすらマリファナとコカインを愉しむ姿には少し違和感を感じましたが、これまで紹介してきたフーリガン要素のある映画の中ではダントツで悪そうな雰囲気が別格でした。

サッカー映画では珍しく劇中に実際のスタジアムが登場します。ナポリのスタディオ・サン・パオロ、ローマのスタディオ・オリンピコ・ディ・ローマで実際に撮影され、発煙等を投げるシーンは興奮しましたね。

個人的にはアンジェロがとにかくイケメンすぎる印象が大きいです。「ターミネーター2」のジョン・コナーのような見た目の彼はウチでも取り扱っているFILAやSergio Tacchini、Diadoraやadidasなどのスポーツブランドを着ていました。アンジェロが履いていたDiadoraの白スニーカーがなぜかめっちゃカッコよく見えて買おうか検討しています。写真にはありませんが劇中で着ているFILAのスウェットも良かったです。イギリスのカジュアルズやフーリガンなどとはまた違ったファッションなのかと思っていましたが、意外にも大きな違いは無い気がします。国境を超えても、フットボールではなくカルチョであっても継承されたカルチャーは存在すると感じました。

もちろんこんな悪い奴らだけがナポリのサポーターってわけでは無いのでそこは誤解しないようにお願いします。国単位、いや地域によっても経済状況や文化などが大きく異なりますが、イタリアのナポリに住む人のサッカーに対する価値観を肌で感じられる作品です。かと言っても気を張って真剣に観るべき作品ってわけでも無いと思うのでぼーっと観て「へぇ~」って軽く頷きながら緩く観るぐらいで良いと思います。そんな作品です。

2023年4月7日金曜日

A history of Britpop

 「ブリットポップ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。英語では"Britpop"。"Brit"とはいうまでもなく"British"の略ですね。「英国の」あるいは「英国人の」ポップ、ということになります。ブリットポップは90年代半ばに一大ブームを巻き起こします。それは音楽誌のみならずテレビや大衆誌までもが取り上げるほどの革命的なムーブメント。そんなブリットポップブームを巻き起こした2大バンドといえばBlurとOasisなのはご存知の方も多いはず。

今回はブリットポップの始まりから終わりまで、さらには2バンドそれぞれのファッションなどについても触れていこうと思います。ちなみに店頭でサッカーウェア以外のアイテムも置いていることに疑問を持たれる方もいらっしゃるみたいで、それに関してはこういったカルチャーからのインプットもあってセレクトしてるということが少しでも理解してもらえたらなと思います。と言ってもフットボールのカルチャーと決してかけ離れている存在というわけではありません。

90年代初頭、Nirvanaを筆頭とするシアトル出身バンドを中心にグランジブームが到来します。80年代にアメリカで当時の日本の音楽メディアから「LAメタル」と呼ばれていたHR/HMバンドによるムーブメントが80年代後半には世間から飽きられ、若者の心から離れていきます。派手な衣装やキラキラしたパーティソングは「リアルじゃない」と。

そんな中、Nirvanaのフロントマンであるカート・コバーンが奏でるロックには、若者の貧困や、世の中への訴えや権力者への怒り、魂の孤独感や絶望感が表現されていて、聴いた若者はその「リアル」に心を打たれました。「これが俺たちが聴きたかった本物のロックだ!」と。

90年代のイギリスは美術が素晴らしく、美術の拠点でもあるロンドン大学にてBlurは結成。1stシングル“She's So High”の浮遊感とワンフレーズをリフレインする構造は、マッドチェスターシューゲイザーが主流になっていた時代性を映しています。

91年のファースト・アルバム『Leisure』は全英7位を記録しますが、当時バンドが背負っていた多額の借金を返済すべくアメリカに長期のツアーを回ることを決意します。しかし、入国の日にアメリカではNirvanaが空前の大ヒットを起こした名盤”Nevermind”をリリースしたのです。 

アメリカ中のクラブやパブでライブをするも、誰1人と目もくれずバンドは解散危機に追い込まれます。フロントマンのデーモン・アルバーンはツアー中、重度のホームシックにかかり、ホテルの部屋に閉じこもっては、毎晩取り憑かれたかのようにTHE KINKSの”Waterloo Sunset”を聴いて心を落ち着かせていたそうです。そこから彼は英国への愛を高々と歌い上げる曲を書くようになります。 

1994年、彼らにとって初の全英1位アルバムとなる『Parklife』がリリース。イギリスの時代精神を表すアルバムとして称賛され、この後の英国音楽シーンの流れを決定づけることとなります。1995年のブリット・アワードでもベスト・アルバム賞のはじめとする4部門を受賞。このアルバムによってBlurはこの時代のイギリス的なポップバンドを纏めて呼んだ総称、「ブリットポップ」バンドの代表格と呼ばれるようになります。

その後にイギリスの最も長寿で最も愛されたポップ音楽番組「トップ・オブ・ザ・ポップス」に出演。当時イギリスはテレビのチャンネルが4つしかなく、この番組にさえ出れば間違いなく若者に認知される、そして売れると確信したそうです。ちなみにデュエットとして参加しているのは、映画「さらば青春の光」でジミー少年役を演じていた俳優のフィル・ダニエルズです。

一方でイギリスの工業地帯に位置する都市マンチェスターからOasisが現れます。マンチェスター出身のバンドとしてはBuzzcocksやJoy Division、The Smiths以来の原石とも言われています。ある日、グラスゴーのパブで「Rock 'n' Roll Star」やビートルズのカバーを演奏しているところを見かけたクリエイション・レコーズのアラン・マッギーによって契約を結ぶことになります。

Blurは首都ロンドンの中流階級に対して、Oasisはマンチェスター出身の労働者階級。「マンチェスターの人間はロンドンを嫌う」これは階級の違いによって必然的に起こりうることで、2バンドの対立は次第に大きくなっていきます。そしてOasisの影響で「反発心や多様性がある労働者階級の文化は優れている」と労働者階級のバンドにも脚光を浴びるようになります。

 

1995年8月14日、Oasisの“Roll with It”とBlurの“Country House”の同月同日発売が決定し、全英シングル1位かけての直接対決となります。この対立に対して多くのメディアが1週間もかけて取り上げ全国民の注目となりました。

 結果は6万枚近い差をつけてBlurの勝利。そこからBlurの勢いは止まらず、2年後にリリースした”Beetlebum”も全英で1位を獲得します。この”Beetlebum”は個人的にもBlurで好きな曲の一つです。

こうしてBlurとOasisの差が広がっていく中で、Oasisも黙っているわけにはいきません。大きな反撃に出たOasisは1995年10月に”Wonderwall”をリリースし、大ヒットを生みます。その後の10月に2ndアルバム”Morning Glory”をリリース。発売直後から世界中で爆発的な売り上げを記録し、オアシス史上最高のセールスを記録したアルバムとなります。全世界では2500万枚以上を売り上げ、Oasisは世界を代表するバンドとしてスターダムへ駆け上がりました。

当時は22人に1人がライブのチケットを買っていたと言われ、ロンドンの街中なら5秒に1人はファンとすれ違うと言われていたほど。イギリス国内どこに訪れてもOasisの楽曲が流れていたと言われています。

しかし、1997年にブリットポップの勢いは失速。Blurはアメリカのアンダーグラウンドのシーンにフォーカスし、同年4月に”Song 2”をリリースします。数年前のインタビューでは「グランジを殺す」とグランジに対する皮肉なコメントを残していたデーモン・アルバーンですが、Nirvanaよりもくどい最高なグランジを披露。MTVでのヘビロテが決定した瞬間にヒットを確信したと言います。今でもCMやスポーツの試合会場などでも流れることがあり、1度は耳にしたことがあるんではないでしょうか。

こうして新たな時代の幕開けと同時にブリットポップは終わり迎えます。長々とブリットポップの歴史を語りましたが、Netflixの「This Is Pop: ポップスの進化」というシリーズの「ブリットポップがやって来た!」というエピソードでも分かりやすく解説されています。興味を持たれた方は是非。

 

では、90年代のイギリスで一大ムーブメントを起こした「ブリットポップ」をファッションという側面から見ていきましょう。個人的な認識としてブリットポップのファッションってそんなに高価な服を着ているというイメージはなく、庶民的なレギュラーブランドを着ていることがほとんどで、着飾らない自然体な自分を表現している「リアルさ」が当時の若者の心を掴んでいたのではないかと思います。分かりやすく言うとふらっとコンビニやスーパーに行くときのような緩いファッション。

ではそれぞれのバンドから1人ずつご紹介していきます。

まずはBlurのフロントマンであるデーモン・アルバーン。現在はGorillazというバーチャル覆面音楽プロジェクトとしても活動しています。

 

ブリットポップのファッションといえば「トラックトップ」などを思い浮かべる方も多いかと思いますが、忘れてはいけないのがこちらのハリントンジャケット。カラーはベージュで裏地はチェックのものが最も印象的です。どこのブランドのものかは不明ですが、恐らくハリントンジャケットの代表的なブランド”Baracuta”のアイテムではないと思います。

 

お次はトラックトップ。デーモン・アルバーンは”Kappa”や”Lotto”、”FILA”、”Sergio Tacchini”などイタリアのスポーツブランドを好んで着ていた印象です。今では少しいなたい印象があるようなブランドですが、着飾っていないところがカッコ良さを感じます。うちでもこの辺のブランドは他の古着屋よりも取り扱いは多い方だと思います。

そしてこの写真は見たことがある方も多いんではないでしょうか。ロンドン出身なだけあって地元クラブのチェルシーのユニフォームを着用しています。ちなみにこちらは95/96シーズンのもの。今では日本でもよく見るスタイリングとなりましたが、イギリスならではの文化ですね。地元のクラブのユニフォームを普段のスタイリングに取り入れる人って今の日本でもなかなかいないですよね。

お次はOasisのフロントマン、リアム・ギャラガー。彼といえばアノアラックパーカーをイメージする方が多いかと思います。彼にとってアイコニックなアイテムの一つと言えるでしょう。

 

そして何と言ってもマウンテンパーカーも忘れてはいけません。この写真ではイギリスのアウトドアブランド”Berghaus”を着用しています。当時のUKアーティストはBerghausをよく着ていた印象です。他にもColumbiaなど着用ブランドは様々です。

 

何よりフットボールを愛し、地元クラブであるマンチェスター・シティをこよなく愛すリアムもスポーツウェアは外せません。こちらはUMBROのピステを着用。インナーにシャツを挟むことで上手くまとまっているように感じます。これも彼のファッションセンスですね。

といった感じで長々とブリットポップを語りましたが、いかがだったでしょうか。これでもかなり凝縮した内容なので気になったところは深掘って調べてみてください。フットボールウェアに着目されがちですが、一応古着屋なのでフットボールのカルチャーを軸に商品をセレクトしています。ブリットポップのファッションが現代の日本でも流行すると面白いですね。

2023年2月21日火曜日

WHAT ARE FOOTBALL CASUALS?

お久しぶりです。気温もグッと上がり、過ごしやすい気候になってきたと肌で感じます。なかなかブログも更新できていませんでしたが、今年は店として色々と動きのある年になりそうなので期待していただけたらと思います。

最近ではチームウェア以外の古着にも注目していただいている方がちらほらと増えてきたように感じます。とても嬉しい。よく勘違いされますが、あくまでウチは古着屋です。サッカーショップでもスポーツショップでもなんでもありません。しかしサッカーが好きなことに違いはありません。 

そんなサッカーはウチで取り扱う商品のセレクトにおける重要な要素であり、ほぼ全ての商品がフットボールカルチャーを紐解いてセレクトしています。店頭でもお尋ねいただいた方には説明しているんですが、「なんでこんなブランド置いてんの?」とか疑問を抱いていた方にも、よりウチでの買い物を楽しんでいただけたらと今回はそんな現在進行形の英国のサブカルチャー"Football Casual(フットボールカジュアル)"をご紹介します。

そもそもフットボールサポーターを指す言葉にウルトラスやフーリガン、カジュアルズといったものがあります。ウルトラスとは熱狂的なサポーターグループを指す言葉で、スタジアム内外で雰囲気を作り出すサポーターのことです。そしてフーリガンとはクラブのために暴力を好む過激なサポーターです。

そして今回ご紹介するフットボールカジュアルとは服装によってそれほど熱狂的ではないサポーターとの区別をするサポーターから生まれたサブカルチャーです。

遡ること1970年代後半、リバプールとエバートンのサポーターが、1977年のヨーロピアンカップ(現在のUEFAチャンピオンズリーグ)準々決勝でフランスのサンテティエンヌと対戦したリバプールを追った際に持ち帰ったヨーロッパのファッションをイングランド全土に紹介した後に始まりました。ヨーロッパ本土に降り立った彼らは自国では手に入らないイタリアやフランスのデザイナーによる高価なスポーツウェアなどをイングランドに持ち帰り、そこから他クラブのサポーターもそれらのブランドへの関心が高まるようになりました。

ちょうどこのあたりのカジュアルズシーンを描いた映画"Awaydays"についても過去にブログでご紹介しているので興味のある方は是非。

https://pelsivestore.com/blogs/blog/this-history-of-the-football-casual

主なブランドとしてLACOSTESergio Tacchiniellesseadidasのスニーカーなどが挙げられます。

当時の警察はドクターマーチンのブーツを履いたスキンズのファンを警戒しており、高価な服を着たカジュアルズには注意を払っていませんでした。

1980年代では、PringleBurberryFILAStone IslandC.P.CompanyC.P. CompanyHenri-LloydBen ShermanFred PerryKappaRalph LaurenFruit of the Loomなどのブランドが新たに加えられました。このあたりからヨーロッパのみにとどまらずアメリカからも取り入れていることが分かります。ファッションのトレンドは目まぐるしく変化し、1980年代後半にはカジュアルサブカルチャーはピークを迎えます。

しかし、政府による暴力の取り締まりとアシッドハウスやレイヴ、マッドチェスターシーンの登場によりカジュアルサブカルチャーの暴力性は消え去りました。お互いがエクスタシーに陥っているときに誰かを殴りたくなるのは難しいでしょう。

1990年代半ばにカジュアルサブカルチャーが再びスポットを浴びるようになりますが、フットボールカジュアルのスタイルは少し変化します。彼らはこのカジュアルなスタイルをユニフォームの一種とし、他クラブのサポーターとの差別化を図りました。特に人気だったブランドとしてStone IslandAquascutumBurberryLACOSTEPradaMAHARISHIなどが挙げられます。

ちょうどこの頃に以前にもブログでご紹介したブリットポップブームが巻き起こり、ブリットポップ戦争ではadidasのアノラックを着た北部の労働者階級のOasisのギャラガー兄弟とモッズ復活主義者でトラックスーツを着た南部の中産階級のBlurが対峙しました。

https://pelsivestore.com/blogs/blog/a-history-of-britpop

2000年代に入ってもStone Islandを着続けたカジュアルズもいますが、ほとんどはスタジアムに入る際に警備の目を掻い潜れるようにStone Islandの代名詞とも言えるコンパスロゴのパッチは取り外しています。しかし、ボタンが2つ付いているために詳しい警察には無意味だとか。これはスタジアム以外のパブなどでもカジュアルズと一目で分かるファッションをしている者は出入り禁止にしている店も多いそうです。

2000年代ではFaçonnableHugo BossFake London GeniusOne True SaxonMaharishiMandarina Duck6876Dupeなどのこれまでになかった新しいブランドが人気を出し始めます。

なんと言っても2000年代にはカジュアルズにフォーカスを当てた映画が多く公開されています。有名なもので"ID"、"The Firm"、"The Football Factory"、"Green Street(Hooligans)"などがあり、The Football Factoryは過去にブログでもご紹介しているので興味があれば是非。

https://pelsivestore.com/blogs/blog/the-football-factory

ということでここからは主要ブランドをいくつかご紹介します。

 

 

Stone Island

フットボールカジュアルの中で最も有名なアパレルブランドと言えるでしょう。イタリア・ボローニャ出身のマッシモ・オスティによって1982年に設立されました。90年代のカジュアルシーンで特に人気を誇っており、その頑丈なデザイン、耐久性に優れた生地、高品質の仕上げにより喧嘩をするのに最適と言われていたとか。しかし現在では人気の上昇による飽和状態にあり、カジュアルズのエリートの間では急速に地位を失いつつあるそうです。


C.P. Company

Stone Islandと同様にマッシモ・オスティによって1971年に設立されたブランド。Stone Islandよりも少し知名度が低いことから「本物のカジュアルブランド」として位置付けられることもあります。

 

Napapijri

読解が難しいこのブランドはNapapijri(ナパピリ)です。ノルウェーの国旗のマークが有名なこのブランドですが、実際には上記2ブランド同様にイタリアのブランドです。20世紀初頭にノルウェーから偉大な探検家が多数輩出していることに由来するそうです。中でも定番なアノラックの "レインフォレスト"はブランドを象徴とするアイコニックなアイテムです。

 

LACOSTE

フランスのスターテニスプレイヤーであるルネ・ラコステによって1933年に設立されたスポーツブランド。1970年代後半からジャンルの垣根を越えてフットボールカジュアルの起源から続く重要なブランドです。特にセーターやニット、ポロシャツなどが人気です。

 

Ellesse

Ellesseはテニスをルーツとしたイタリア生まれのスポーツウェアブランド。英国のカジュアルカルチャーを取り入れた代表的なカジュアルブランドです。過去にはトラックスーツの人気が高かったようですが、近年ではTシャツやジャケットを好む人が多いようです。ヨーロッパでEllesseはまだフットボールサポーターを席巻していませんが、ベルギーやドイツの近隣諸国では多くのサポーターに着用されています。

 

Fred Perry

LACOSTEと同様にFred Perryもフレデリック・ジョン・ペリーというテニスプレイヤーによって設立されました。Stone IslandやC.P. Companyとは違ってイギリス発祥のブランドということもあり、イギリスのカジュアルズシーンでは真のクラシックブランドとも言われます。代名詞のポロシャツは人気が高く、定番のM12に関してはウェストハムサポーターの熱望から水色のエンジのラインのポロシャツが生産され、現在でも定番として並べられています。その人気はカジュアルズのみならず英国のユースサブカルチャーに絶大な人気と影響を与えてきました。

 

Sergio Tacchini

こちらもテニスプレイヤーが設立したスポーツブランド。当時テニスウェアは白のウェアがほとんどだったのに対して、エレガントなテニスウェアを制作するためにカラフルな生地を使用するというアイデアを用いて人気を博しました。ヨーロッパの高級スポーツウェアへの関心が根付き始めた80年代のイギリスフットボールカジュアルシーンですぐにファッショナブルなブランドとなりました。

 

adidas

世界最大のスポーツブランドの1つであるこのブランド。adidasに関しては主にスニーカーが有名です。限定品なんかを自国に持ち帰って見せつけるというのもフットボールカジュアルならではの文化で面白いんですよね。特に有名なモデルとして知られるのはSambaTrimm TrabMünchenStan SmithSL72ItaliaGazelleForest Hillsです。

 

Burberry

最も典型的なカジュアルブランドと言われるのがみなさんお馴染みBurberry。それにもかかわらずヨーロッパ全土ではあまり人気がないようです。しかしイングランドではグループに1人はバーバリーのスカーフやキャップを身に付ける者がいるとか。他のヨーロッパ諸国では「本物のカジュアルズ」だけが着ていると言われています。

 

Aquascutum

防水加工を施したウール生地を初めて作り出したブランドとしても有名であり、そんな経緯から「水の盾」を意味するラテン語のAquascutum(アクアスキュータム)をブランド名にしたそうです。ブラウンとブルーのチェックはBurberryと同様に人気が高く、口元を隠すスカーフはスタジアムにバレずに入る意味でも必須品として使用されます。

 

MAHARISHI

ロンドンでミリタリーコレクターとして知られているハーディ・ブレックマンが1994年にスタートさせたブランド。自然保護の活動家でもあるデザイナーのポリシーが存分にデザイン及び使用素材に盛り込まれた世界最高峰のストリートカルチャーウェアレーベルです。機能素材を使った細かなディティールをシンプルに仕上げるそのデザインが幅広い層に支持を集めています。最近ではアーセナルとコラボもしていましたね。

 

Henri-Lloyd

丈夫なセーリングウェアを求めるヨットマンや船員に応えるために、1963年にマンチェスターで設立されました。フットボールカジュアル シーンには 90年代に注目を集めるようになりました。これは他のスポーツにルーツを持つスタイリッシュなブランドを求めるフットボールサポーターが増えたためだそうです。

 

FILA

非常に馴染み深いブランドですが、フットボールカジュアルにおける真のクラシックブランドの1つです。 特にトラックトップやポロシャツはフットボールカジュアルシーンでは絶大な人気を誇っていました。しかし他社へのライセンス供与などにより地位は下がりつつあるそうです。 

 

Pringle

カシミアニットウェアを専門とする王室御用達のスコットランドの象徴的なニットメーカーです。主にゴルフウェアとしてブランドを発展させ、1970年代から1980年代のフットボールカジュアルでの人気が最高潮に達していました。

 

Lyle & Scott

こちらもスコットランドのブランドであり、Pringleと同様にゴルフウェアを通じてその伝統を発展してきました。比較的安価なのでお金に余裕の無い若いカジュアルズに人気です。とはいえ年配の層にももちろん高く評価されています。

 

One True Saxon

1998年にポール・スミスの元従業員数名によって設立されたファッションブランド。イングランドの中心であるノッティンガムに拠点を置く彼らの服装は、英国らしさの愛国心を誇りとし、英国そのもののマインドを取り入れたものでした。カジュアルズからはデザインのシンプルさと高品質で耐久性のある生地に高く評価をしています。

  

Ben Sherman

Ben Shermanはモッズカルチャーの基礎ブランドであり、その後カジュアルサブカルチャーに浸透していきました。モッズ、スキンヘッズ、スウェードヘッズのファッションの定番となった有名なオックスフォードボタンダウンシャツを製造した最初のブランドとしても有名です。

 

Paul & Shark

1921年にイタリアで設立されたこのブランドは1977年にメンズスポーツウェアラインが誕生し、以来フットボールカジュアルシーンで人気のブランドとなりました。現在ではあまりスタジアムでは見かけなくなりましたが、かつては真のクラシックブランドであり、多くのカジュアルズから愛されていました。

 

FJALL RAVEN

FJALL RAVENは1950年に設立されたスウェーデンのアウトドアブランド。直訳すると「北極ギツネ」という意で、北極を生き延びる北極ギツネのように機能性の高いアウトドアギアを作っていこうとキツネをモチーフにしたそうです。日本ではカンケンバッグをよく見かけるこのブランドですが、1990年代にフットボールカジュアルシーンで人気になりました。寒い雨の週末や屋根のないスタジアムに最適です。

 

Victorinox

スイスの若い刃物職人が自身でビジネスを始め、後にはスイス軍に兵士用ナイフを供給していました。アパレルは2000年ごろから開始しており、フットボールカジュアルブランドとして浸透したのも近年の話です。高品質の仕上げ、機能的なデザイン、すっきりとしたシルエットは多くの支持があり、一定の派閥からはVictorinoxがカジュアルブランドとしてStone Islandを倒すチャンスは十分にあると示唆する人もいるんだとか。そのほかに時計なども生産したりと物作りの技術の高さを誇ります。2017年にアパレル展開は終了しています。

 

6876

1995年に設立されたイギリスのファッションブランドです。ブランド名の数字の羅列は1968年のフランスの五月革命の年と、1976年のイギリスでパンクがブレイクした年に由来しているそうです。フットボールカジュアル シーンでは比較的新しいブランドですが、そのデザイン原則がフットボールカジュアルブランドと一致しているため、忠実なファン層を獲得しています。

 

The North Face

誰しもご存知であろうアメリカのアウトドアブランド"The North Face"。ブランドとしてフットボールカジュアルシーン浸透したきっかけは近年の話で、フーリガンが全身黒い服を纏うようになったことからだそうです。プレミアリーグの中継でも全身黒の服装をしたサポーターをよく見るとThe North Faceを着ていることが増えたように感じます。

 

実際には話し尽きないくらいにまだまだフットボールカジュアルとしてカテゴライズされているブランドがあります。そちらは今後の投稿やブログでご紹介していこうと思います。「だからこのブランド置いてたのか!」って感じで歴史と照らし合わせながら買い物を楽しんでもらえたら嬉しく思います。そしてそれぞれの自分に合ったスタイルを見つけてみてください。